台湾政治

【解説】2020年台湾(中華民国)総統選挙がもたらす未来

更新日:

2020年1月11日、台湾の総統・副総統選挙、立法委員(国会議員に相当)選挙の投票が行われ、即日開票が行われました。結果を受けて、今回の選挙の総括と今後の動きについて解説して行きます。

台湾総統・副総統選挙概況

投票率

今回2020年の総統選挙は直接選挙の始まった1996年から数えて7回目の総統選挙になります。今回の投票率は74.9%で、前回2016年の66.27%を8.63ポイント上回り、陳水扁総統が当選し初めて政権交代が実現した2000年の選挙をピークに続いていた低下傾向に歯止めがかかった形となりました。

有権者数は前回より約52万8千人増えて1,931万人となりました。高齢人口の長寿化と若年層の投票年齢到達による有権者数増が続いていますが、今後減少に転じることが想定されています。

投票率上昇の要因

今回、投票率が上昇に転じた要因は、若者層の投票意識が上がったことが考えられます。これは香港の反送中デモによる中国に対する危機感が高まったことが要因です。事前の自由時報の投票に行くかを聞いた世論調査でも20歳〜29歳の年齢層でも89.2%の人が投票に行くと答えており、若い世代での投票率が上がったことが要因でしょう。

また、投票日当日の天候が良かったことも影響したと考えられます。

総統・副総統選挙の結果

開票結果

開票の結果、現職の蔡英文、頼清徳ペアが817万票を獲得し再選を果たしました。得票数は直接選挙開始後の歴代の中で最高得票数となりました。

内政においては国民の満足度は低い

国民党の韓国瑜高雄市長が立候補を表明した2019年4月頃は、世論調査による支持率は韓国瑜氏が蔡英文を大きく引き離しており、国民党が有利な状況でした。これは韓国瑜候補が高雄市長選挙同様、経済政策を前面に打ち出し、民進党政権の内政政策に不満を持つ有権者の取り込みに成功していたことが要因としてあります。

香港反送中デモで情勢が一変

その後、香港において反送中デモが起きます。中国からの圧力により香港の一国二制度は揺らいでおり、蔡英文総統はすかさずデモの支持を表明しました。中国との関係改善で経済を回復させる政策を打ち出していた国民党は明確な態度を表明できず、世論も中国に飲み込まれることへの危機感が高まりました。結果、蔡英文総統と韓国瑜高雄市長の支持率が逆転します。

若者の投票動向が影響を与えた可能性

台湾では20歳から投票権が得られますが、若者の投票率は比較的低いと言われていました。ある世代別調査では25歳の投票率は極端に下がる傾向が見られます。今回、香港デモを受けて、若者の投票率が上がった可能性があります。

本土意識を持つ人口が増加

台湾では戦後、国民党政権が台湾を統治するようになってから、台湾史は深く教育されてきませんでした。中国の正統政府を自認する国民党にとって、歴史=中国史であったからです。しかし、民主化の流れを受け、1997年から「認識台湾」と呼ぶ教科書が導入され、台湾についての教育が行われるようになりました。この教科書は現在では使われていませんが、現在の教育制度に組み込まれています。

ポイントは、これらの新しい教育を受けた世代が20年を経て投票可能年齢に達し始めていると言うことです。彼ら彼女らは本土意識を持ち、生まれた時から「現状維持」の両岸関係の中で育ってきている世代です。これらの世代が投票動向に影響を与え始めています。

立法委員選挙の結果

民進党が過半数を確保、安定政権維持へ

一方、同時に行われた立法委員(国会議員に相当)選挙は民進党が過半数を確保しました。前回2016年は記録的な民進党の勝利で、今回過半数維持が焦点となっていましたが、議席数を落としたものの過半数は維持し、引き続き安定した政権運営が行えることになりました。一方、国民党は3議席増やしたものの民進党には遠く及ばず、2016年に続き大敗という結果に終わりました。

次の4年を占う

内政・経済政策が鍵

民進党としては、外部要因もあり勝利に終わりましたが、これからどれだけ実績を積み上げていけるかが次の2024年を左右するのは間違いありません。元々経済政策では韓国瑜候補の方が支持を集めており、国民の政府に対する不満が溜まっているのは確かであり、年金改革や労働基準法の改正等で混乱を招いた反省を踏まえ、更に丁寧な政権運営が必要になってくるでしょう。

外交は米中関係に左右されるものの基本は現状維持

現在の米中の対立は台湾にとって有利に働いています。台湾もうまく流れに乗り、米国からの軍備調達等関係強化に成功しています。基本的に現状維持がこれから4年の蔡英文政権の基本スタンスでしょう。中国は国際的な圧力をかけ続け、揺さぶりを続けるはずですが、中国、台湾のいずれかが一方的に現状を変えてくることは難しいのではないでしょうか。中国も言葉上は台湾に対して恫喝を続けていますが、実力行使には動きにくいというのが実のところで、国内向けに強行スタンスを崩せない中で、現在の状況が続くと見ています。

民主化のさらなる深化が台湾唯一の防波堤

中国より、台湾独立、とステレオタイプな見方をされがちですが、国民党、民進党いずれかが勝利をして政権を取るにしても、このように民主的な手続きを経て政権交代が行われ、民意が正しく反映されている間は台湾の主権が失われることはありません。

台湾総統の直接選挙が始まって24年、民主化の旅はまだまだ道半ばであり、更に深化させて行くことが台湾を守る唯一の道です。台湾にあって香港にないもの、それはまさに民主政治であり、そして国を守る最強の武器であることを信じています。

台湾総督府

-台湾政治

Copyright© 台湾のトリセツ , 2020 All Rights Reserved.